ナゴヤの秋、エースはまだ決断せず
ナゴヤの秋、エースはまだペンを置かない――。
国内FA権を取得した中日ドラゴンズ・柳裕也が、30日にナゴヤ球場でトレーニングを行い、取材に応じた。言葉は短く、しかし重い。
「決まっていることは何もありません」
この一言が、現在の柳の立場と、ここから始まるオフの難しさをそのまま表している。
柳裕也という投手のこれまで
2017年ドラフト1位で中日に入団。
2021年には最優秀防御率と最多奪三振の二冠を獲得し、名古屋のマウンドに「エース」の看板を掲げた右腕だ。
だがここ数年は、かつての圧倒的な姿からは一歩引いた印象がある。
今季は右肩の違和感にも悩まされ、3勝5敗、防御率3.29。数字だけを見れば「悪くはない」が、「エースとしてチームを上に持っていったか」と問われると、首をかしげるファンもいるシーズンとなった。
中日のスタンス:宣言残留OKという“甘くもシビア”なカード
今回のFAがややこしいのは、中日が“宣言残留OK”という姿勢を示している点だ。
- 他球団の評価を聞きに行ってもいい
- それでも戻ってきたいなら受け入れる
- つまり「出ていきたいからFA」ではなく「自分の市場価値を確認するFA」も認める
これは裏を返せば、中日としても“本心では手放したくない”ということでもある。来季以降も投手層を厚くしたい、育成だけでローテを回すのはまだ怖い――そんな球団事情も透けて見える。
一方で、FA権の行使には期限がある。
日本シリーズ終了の翌日から、土日祝を除いた7日間。
「決断の時計」は、もうすぐ動き出す。
しかし今回は「素行」も含めたFAになる
今回の柳のFAが難しくなっている最大のポイントは――今年報じられた“不倫スキャンダル”の存在だ。
本来なら、
「故障はあるが、ローテに入れれば計算できる先発」
として、複数年で拾う球団が出てきてもおかしくない。
しかし実際のファンの声はこうだ。
- 「FAの年に不倫発覚は少なからず身のふりに影響する」
- 「“いい人キャラ”だっただけに残念」
- 「コンプラ室が動きにくい選手になってしまった」
- 「不倫しててもOKな球団ってそう多くない」
つまり今回は、“実力+故障歴+年俸”の比較”ではなく、“実力+故障歴+年俸+イメージ”で見られるFAになる。ここが、数年前の“エース格のFA”と決定的に違う点だ。
ファンの声①:成績は右肩下がり、複数年はリスキー
コメントの多くは、冷静にここ2~3年の柳を見ている。
- 「成績が右肩下がりだからね」
- 「援護が無いって言う前に、ローテを守れてない」
- 「2億プラス3年を提示する球団はあるかもだけど、中日ではあり得ない」
- 「マネーゲームになるなら即撤退でいい」
中日の年俸は現在1億1,000万円あたりと見られており、球団としては不祥事も含めて**“マイナス査定+残留の道は開く”**という、ややドライな対応になる可能性が高い。
一方で、他球団が「中日よりは高く」出す可能性はある。だからこそ柳としても「話は聞いておきたい」局面なのだ。
ファンの声②:人的補償を出すほどか?という現実的な目線
今回のFAでたびたび語られているのがこれだ。
「権利を行使したとして、人的補償を出してまで獲得する選手か?」
柳の今の立ち位置は、
- ピークは明らかに過ぎている
- 故障歴あり
- スキャンダルあり
という“三重ハンデ”つきのFAである。
だからこそ、
「〇〇の人的保証が柳」
という“最悪のオチ”を避けたい球団もあるはずだ、という見方が出ている。コンプライアンスを強く見る球団ほど、慎重になるのは間違いない。
ファンの声③:中日は安く買い叩くべき?という強硬派
コメントの中には、かなりはっきりこう書かれているものもあった。
- 「今回の不祥事で中日は安く買い叩くべき」
- 「イヤなら移籍してもらって結構」
- 「人的で若手を取れれば言うことなし」
これらは感情的なだけの意見ではなく、**「不倫をした選手を高額で残すと、球団としてのメッセージがぶれる」**という、組織イメージの話でもある。
特に中日は来季、バンテリンドームの改修などもあり「球場が狭くなる→打撃の色をつけたい→マウンドをどう整えるか」という大きな変化の時期に入る。そこに“素行でマイナスイメージのついた中堅投手”を高く残すかどうかは、フロントとしても悩ましいところだ。
他球団から見たときの柳:欲しいけどリスク高めの投手
他球団から見ると、柳にはこんな評価が並びそうだ。
- 「ローテに1人いたら確かに楽にはなる」
- 「ただしフル回転は期待できない」
- 「2億3億を払うなら別の先発を探したい」
- 「でも市場にそんなにいい先発もいない」
- 「じゃあ“1年お試し+出来高”でどうか」
この“使い勝手の評価”が、今回のFAの一番のポイントだ。
つまり、「完全にいらない」でもなければ、「どうしても欲しい」でもない。値段と年数次第――ここに落ち着いている。
プライベートの影響:いい人キャラとの反動
今回のスキャンダルがここまで尾を引いている理由は、単に不倫だからではない。
「子どもにボールを渡していた」「遺児を球場に招待していた」――そんな“人の良さが見えるエピソード”と真逆の行動だったから、ファンの失望が大きくなっている。
コメントにもこうある。
- 「柳みたいな人が不倫するんだって」
- 「いい意味でも悪い意味でも意外だった」
- 「まずは奥さんと向き合った方がいい」
- 「FAより家庭問題を先にだろ」
FA交渉はイメージ商売の側面もある。
今の柳を100%の条件で獲る球団があるかといえば、やはり難しい。
「残竜」が実は一番いい?という見方も根強い
そんな中でも、一定数のファンはこう見ている。
- 「長い目で見たら残竜が一番いい」
- 「中日は面倒見がいい球団」
- 「FAで他に行くと、ちょっとダメならすぐ切られる」
- 「中日でコーチや監督の道まで残ってる方がトータルでは得」
これは、中日の“身内を大事にする文化”を知っているファンならではの視点だ。
スキャンダル後であっても、復帰の場をつくってくれる可能性があるのは、やはり生え抜きの球団である。FAで移籍すれば、そこはシビアになる。
中日の本音:流出は痛いが、マネーゲームはしない
まとめると、中日の本音はおそらくこうだ。
- 柳がいなくなるとローテが薄くなるので、残ってくれるならありがたい
- でもスキャンダル+成績で、さすがに“ご祝儀複数年・大幅アップ”はできない
- 他球団が高く出すなら、人的補償で若い戦力を取る選択肢もアリ
- だから“宣言残留OK”にして、柳の納得を優先させる
つまり、「残ってくれたらうれしい」「でも追いかけてまではいかない」――この距離感で見ているはずだ。
今後のシナリオ3つ
- 宣言せず残留
中日のダウン提示 or 現状維持に近い形で1年契約。来季結果を出してからFA再挑戦。本人の家庭事情にも配慮できる。 - 宣言して他球団と交渉→中日に戻る(宣言残留)
「市場評価を見に行った結果、残る」が一番きれいな着地。だがファンの一部からは“印象ダウン”もあり得る。 - 宣言して移籍
コンプラに比較的柔らかい球団 or 先発が明確に足りていない球団が手を挙げた場合。年俸が中日より上がるなら動く可能性はある。
これは“未定”ではなく“熟考”
柳はこう言った。
「決まっていることは何もありません」
この言葉は、“どこからも声がかかっていない”という意味ではない。
“どこが一番、自分と家族にとっていい場所かを、ちゃんと選ぶ”という意味のほうが近い。
- 成績は全盛期より下がった
- 不倫でイメージも下がった
- それでもローテを回せる右腕は市場価値がある
- 中日も本音では手放したくない
- ファンも「残ってくれたらうれしい」「でも高いならいいや」で割れている
名古屋のエースは今、最後の一本を選ぶ前の“構え”の段階にいる。
このオフ、柳裕也の名前はしばらく中日ファンのタイムラインに居座り続けるはずだ。
